それは禁断の
同じ瞳、同じ体、同じ心を持つ者
けして知ってはならない事
すなわち
もっとも近し者との愛
















薄暗い倉庫。
物置として使われているのか、無造作に詰まれたコンテナや床の上にうっすらと埃が床に溜まっている。
その片隅で、何やら動く『物』があった。
それは人の影。否、影にしては大きすぎ、また人としてはありえぬ姿。
紅き硝子(ガラス)の瞳。雪の様な白さを持つ鋼の肌。
そして、相反するかの如くに対照的な、それでいて鏡に写したかのように同じ姿をした人影だった。
影は動く。熱く燃え上がる体にゆっくりと唇を這わせ、たどり着いたその先、人間の男性性器を象った金属に灰色の舌を絡ませゆっくりと口の中に誘う。
「あっ………………」
もう一つの影が、その感覚に甘い吐息を漏らした。
舌先が金属に絡み付く。その先から根元まで満弁に唾液を眩し、時には強く、そして弱く吸い上げてやると、金属とは思えぬほどぐったりとしていたそれが徐々に本来の硬さとも言えるべき高度を取り戻していった。
「いあ……………はうっ………くぅん………」
もう一つの影が親指の付け根を噛んだ。ふるふると小さく震え、物欲しげな表情を浮かべる。
舌先と共に影の白い太股を撫で回す黒い手が、そっと、もう一つの性器の中へと潜り込まれた。
進入を拒むようにきつく入り口を閉めるそれを無視し、漆黒の指先がえぐるように内部をかき分け、敏感な所を探り当てては執拗に責め立てる。
「んっ…………んん…………もぉ………………」
切なく、甘い声が響く。
もう一つの影、炎の如き紅の姿が己をかきたてる行為に悶え、白い太股の付け根に収められた影の頭部を押さえつけた。
「あ―――っ!…………」
の瞳が曇り、体に電撃のような衝撃が走る。
「っ………」
紅の体が力なく床へと沈み込む。
荒い息を漏らしながら、金属から白濁色の液体を影の口内へと吐き出した。
「一杯出たのだな、炎竜」
その吐き出された物を音を立てて飲み込み、手の甲で唇を拭うと影は笑いかける。
伏せていた身を起こし、影は『炎竜』と呼ばれた者の体を見下ろした。
あどけない幼さが残る顔は、美酒に酔ったかのようにうっとりと陶酔の表情を浮かべ、深く胸を上下しつつ液体を解き放った感触の余韻を噛み締めていた。
それは、とても妖艶で、我侭で無鉄砲な彼と同一人物とはとても思えない。
力なく投げ出された足を人差し指で軽く撫でると、ぴくり、と体が小さく跳ねた。
影は身を移動させて、ぴったりと炎竜に体を重ねると、
「炎竜……………」
と、まるで大切な秘め事でも呟くかの様に、炎竜の耳元でその『弟』の名を甘く呟いた。
だがそうしている間にも、黒く細い指先はするりと体を滑り、たった今放ったばかりの所へ指をあてがった。
今夜一晩だけで何度も絶頂に達っした筈のそれは再び硬度を取り戻し、ゆっくりと頭をもたげはじめる。
「は……んっ……んんっ………ひょ……ひょう………ひょう・・・りゅぅ………」
襲いくる感覚に小さい子がいやいやと首を振るかのように首を僅かに左右に振りながら、炎竜は『兄』の名を呟いた。両腕を伸ばし、その頬に口付ける。
影『氷竜』は炎竜の左側に突き出ているセンサーを軽く噛んでやった。
そのとたんにびくびくっと大きく体が震え、一際大きく喘ぎ声を盛らす。
「あっ…………はぁっ………」
指先との刺激が堪らない、といった表情をする。
氷竜はそれを見ると満足そうに口元に笑みを浮かべ、再び耳元で呟いた。
「炎竜?炎竜はこれからどうしたいんだ?」
氷竜の計算された巧みな動きに翻弄される炎竜は、両股をこすり合わせるような仕種をした。
氷竜はその行動で、紅の体をもつ『弟』がより強い刺激を求めている事を知ったが、それには素知らぬふりをし言葉を続ける。
「言葉にしなくては、私には解らないぞ?」
それを聞き、炎竜の瞳が氷竜を覗き見た。
まるで熱に浮かされたような炎竜の瞳は、普段から嫌という程見慣れている氷竜の心ですら虜にする魔力を秘めていた。
氷竜はゾクゾクと来る背筋の電撃に耐え、冷静なふりをしながら言う。
「そんな目をしてはいけないな。やって欲しい事があるなら、きちんと言わなければ対処の使用がないんだぞ」
氷竜の舌先が、薄く炎竜の唇をなぞる。
口付けるのでは無く、ねっとりとした舌先が触れるか否かの距離で這いずり回る。
氷竜の舌先と指の愛撫に暫く酔っていた炎竜だったが、訪れぬ刺激に痺れを切らしたか、唇だけを動かして言葉を紡いだ。
『おまえが欲しい』
と…………
だが、舌先で唇の動きを読み取っていた氷竜に、それは聞き入れられる事は無かった。
それだけでは氷竜が承諾しなかったのである。
氷竜は炎竜の耳元で、幼子をあやす様に優しく囁いた。
「炎竜、ちゃんと言わない子にはお仕置きをしなくちゃいけないな?」
炎竜の物を扱く力を弱め、固く震え上がった物から指を放そうとした。
それを察知したのか、それとも氷竜からの刺激をもっとおねだりしようとしてなのか、炎竜は、
「んんっ………………」
と、鼻にかかった様な、より淫らで欲情的な声を立てながら離れかけた氷竜の手を掴もうとした。
だが、それよりも早く氷竜の手は離れ、炎竜の手は虚しく空を切り、固くなった物に触れる。
「残念だったな、炎竜」
僅かに微笑を見せた氷竜だったが、炎竜はその言葉を聞いていなかった。
その言葉よりも、炎竜には興味を引かれる物が在った。
それは、震え上がった炎竜自身だった。
氷竜の手を掴もうとした指先は空しくそれ、変わりに高められていた物に触れられる。
初め、手を放そうとしていた炎竜だったが、その思いも寄らない熱さに興味をそそられ、手を放せられずにいたのだ。
「熱いだろう」
と、上半身に口付けながら氷竜は呟いた。
「熱くて、とても苦しいだろう。お前のおねだりがちっとも来なくて、早くと叫んでいるんだよ」
上気する頬に口付け、胸元のダイヤルを指先でなぞる。
「炎竜、お前はどうして欲しいんだ?さっきまであんなに私が教えてあげていたではないか。言ってごらん、一体何が欲しいのか」
氷竜は内心楽しんでいた。炎竜にその『言葉』を言わせるのを彼は何よりもの楽しみにしているのである。
だが、彼の期待を裏切り、炎竜の唇は沈黙したままだった……………
「そう………言いたくないんだな………」
穏やかな氷竜の口調に何かが変わる。
「私の言う事を聞かない悪い子には、お仕置きだ」
と、触れられていた炎竜の手を引っ張った。
「あっ…………」
腕を引っ張られ、体が反転する。
炎竜は仰向けから四つん這いの形となり氷竜の上にまたがった。
ただし、炎竜の顔は氷竜の頭部の上では無く、氷竜の足の付け根………彼自身の上に置かれていた。
「いっ、嫌ぁっ見ないでぇっ!」
必然的と炎竜の下腹部は氷竜の上半身に向けられる事となる。
何度も、何度も氷竜が進入し、かき回しながら熱い思いを吐き出された入り口が目の前でひくひくと痙攣している。
あまりにもの状況に炎竜は我に帰ると、急ぎ両足を閉じようとする。だが指先や氷竜自身に進入され続けてきた腰に力が入る筈も無く、氷竜は力任せに広げさせ腰をがっちりと掴むと入り口に口付けを与えた。
炎竜の背が弓なりにしなる。
だがそれにも構わず氷竜は行為を続ける。親指で入り口を押し開き、蜜のように溢れ出る液体を音を立てて丹念に舐め取る。
そして、ねっとりと唾液を湿らせる舌先を静かに内部へ差し入れた。
「きゃ……ひあぁぁぁんっっ!やぁっ−やぁ――――!」
敏感な内部を氷竜の舌が幾度も丁重に舐め上げる。唇を押し付けたまま、指先を差し込み、感じて止まない場所を探り当てては指先でかき回し、舌が更に深く進入する。
「ひょっ……りゅう……氷竜………やだよ………許してよぉ…」
炎竜の唇から許しを求める声が漏れた。絶え間なく襲う腰への愛撫。ぐちゅぐちゅとくぐもった音をたてて、氷竜の目の前で透明な液体が零れ出る。
「何を言うんだ、これはお仕置きなんだぞ」
舌を抜き、指を内部に残したまま氷竜は言う。
「何も言わないから、こうしてお仕置きして、何がしたいか言わせようとしているんじゃないか?悪いのは自分なのにどうして私が怒られなくてはいけないんだ」
恐いほどの優しい笑みを浮かべる。
「だって………氷竜が………」
「だってじゃないだろう」
残していた指で強引に開き、乱暴に舌を突き入れた。
「いゃあぁぁぁぁぁっ!」
炎竜が悲鳴を上げた。今までとは違う程強く、そして荒々しく舌が最奥まで差し込まれて、柔らかい舌が内部を嘗め回して、指が内部をかき回して………いつしか炎竜は悲鳴を上げる事すら忘れ、氷竜に身を預けたまま胸を激しく上下させる。
その唇からは、もはや啜り泣きしか聞こえなかった。
「ひょう……りゅ……う……氷竜……お願い……許して……僕が…悪い子だったよぉ……」
人ならば、泣きながら哀願している事だろう。飲み込めない唾液がぼたぼたと頬を伝い床へ、氷竜の足へ落ちる。
「僕…が……悪い子だったんだ…………氷竜……が…注意して……くれた…のに…無視……した……から……僕が……いけないんだ」
泣きじゃくる炎竜を余所に、氷竜は腰の愛撫を続けていた。強く舌を這わせ、荒々しく指先でかき回し、炎竜に聞こえるように音をたてて吸い上げる。
「だから…だから…お願い……氷竜…」
ふるふると体を震わせていた。体が、焼け焦げるように熱い。
「お願い………して………」
荒く息を弾ませ、炎竜はとうとうおねだりをした。
「氷竜の太くて…大きくて……長いのを……僕の中に…突き入れて……いっぱい……いっぱい出して………僕を氷竜の……おもちゃにして………」
泣きじゃくりながら哀願の言葉を紡ぐ。
すると、あれ程攻め続けていたのにも関わらず、すんなりと氷竜は愛撫する指と舌を炎竜から放した。
「はい、よくできました」
泣きじゃくる炎竜に、とても優しく穏やかで、安心感をもたらすような微笑みを投げかける。
「お前が我侭言うから、こんなになるまでお仕置きしなくてはならなかったんだぞ?」
炎竜はようやく開放された事に安堵の息を漏らしてか、くたりと力なく氷竜の上に倒れ込む。
その瞳は妖しく沈み、『理性』と言う自我を読み取る事は出来なかった。
「………炎竜?」
氷竜は、名を呼んでみる。
だが、聞こえていないのか、炎竜はただ荒く胸を上下させていた。
「…………………」
その姿に刺激されたのか、氷竜は声も無く笑う。
カチリ、と何処かでパーツの外れる音がした。
「あっ…………」
ドキリッ、と炎竜の駆動音が高まった。
その音で、次に何をするべきか悟る。
「氷竜…………」
恐る恐ると、炎竜は音がした場所。氷竜を隠す外装の上に唇を寄せた。
内部の熱さが伝わるそこに舌先を伸ばし、指先と共に外装を剥がしとる。すると、押さえつけられていた氷竜の物が勢い良く飛び出した。
それは、幾夜も炎竜を貫き、今宵も炎竜を抱き続けたにも構わず硬く、氷の名を持つ者には相応しくない程の熱を持っていた。
「氷竜………」
ツン、と誇らしげに上を向く物に喉を鳴らし、このままでも貫かれてしまうのでは無いかと思う程のそれを、炎竜は愛しそうに口へ含む。少しぎこちなく、丁寧に舌を這わせてゆっくりと上下に揺り動かしながら、指先を添え、小犬がミルクを飲むように嘗め回し、炎の名を持つ己すら溶かしてしまいそうな灼熱の塊を、最奥へ招き入れようと口を轟かせる。
「気持ちいいよ、炎竜…………」
しきりに自分の物にしゃぶりつく炎竜の太股にそっと口付けてやる。
「気持ちいいから、ご褒美だよ」
太股から唇が滑る。つつ、と唇を這わせたまま、舌先を炎竜の中に再び差し入れた。
「!」
炎竜の動きが止る。だが、ゆっくりと動く舌先の動きに誘われたか、炎竜は再び動き出す。
「うっ…んんっ…うんぅ…ぅぅぅ……」
悲鳴を上げる。
炎竜が吸い付く度に、氷竜は舌先の動きを早め炎竜を責め立てる。氷竜が責める度に、炎竜は強く吸い上げる。そんなイタチごっこを続けながら、二人は暫しそんな行為に没頭していた。
だがそれも、終わりに近づこうとしている。
「……っ……く………」
眉間を歪め、氷竜が呻き声を漏らす。
それと同時に、炎竜の口内に含まれていた物が一瞬大きくなり、その先端から白濁色の液体を吐き出した。
「くふぅっ、あぁっ!」
反射的に炎竜は唇を放してしまう。すると口内に吐ききれなかった液体がそのまま炎竜の顔に放たれた。 ぽたり、ぽたりと涙のように頬から滴り落ちる。
解き放った感覚に安堵の息を吐くと、横たえた身を起こし、炎竜を膝の上に抱き寄せた。
「炎竜…………」
切なく、氷竜は呟いた。
放心状態に陥り、空ろげに宙を見る炎竜の頬にそっと口付ける。
そしてそのまま、炎竜を背中から抱き寄せたまま、氷竜は両足を持ち上げ、声を掛けずにその体を貫いた。
「ひっ、ああぁぁぁぁぁぁっ!!」
放心から、一気に現実へと連れ戻される。
「ああっ、ひぃ、氷竜……あっ、……い…………」
不意打ちを食らい、身構えることも出来ずにいた体は、突然の進入に翻弄されていた。
かき混ぜる様に内部を動き、放っていた物を指先で弄ぶ。
ゆっくりと静かに、焦らすように握り締める。
「ひょ…りゅ…う…氷竜……あっああ………!」
深く貫かれた体の中で、氷竜が熱く唸りを上げていた。
炎竜の感じて止まない場所を熟知している氷竜は、何度もその場所を突き上げ、更なる高みに陥れようとする。
その企みを知ってか知らずか、炎竜は内部をきつく締め、狂わんばかりの快楽を体全てで味わう。
「ああっ、氷竜、氷竜、氷竜――――!」
意識さえ弾け飛ぶような快楽の中、炎竜は氷竜の名を叫ぶ。まるで、そう、子供の様に………
「炎竜、私の可愛い炎竜」
快楽に苦しみ、悶える炎竜の頬を優しく撫でいやる。
「もっと…そう、もっと乱れていいんだよ。…もっと私に貫かれて…口付けられて…その可愛い顔を私に見せ付けておくれ…」
強く、炎竜を抱きしめた。唇に優しく口付け、激しく体を打ち立てる。
「愛しているよ、炎竜。お前だけが、私の全て。お前だけが、私の生きる全ての理由…」
体制に苦しくなったか、両足を掴み、入りやすい角度にしようと腰を浮かせた。刹那、深く飲み込まれた塊に炎竜は背を大きくしならせた。
絹のように甲高い悲鳴を上げて、熱い液体が宙に解き放たれる。
「氷竜……ぁ…ぁ……」
何度も激しく打ちつけられて、そして数えきれぬ程解き放たれ、それでも炎竜は氷竜を求め続ける。 え 「あ――――――!」
襲い来る快楽の嵐。
炎竜はその意識を遠く弾け飛ばすまで、何度も絶頂を極めていった。



















静寂が全てを支配する。
光すら存在せずに静まり返った片隅で、ゆっくりと氷竜は横たえていた半身を起き上がらせた。
一度、二度、目の焦点を合わせて頭を振るう。
胸元のチェストを開き、内臓されているタイマーを確認した。

PN:3時42分

「もう、こんな時間か………」
時刻を確認し、チェストを閉じると床に手を置いた。
カチリ…
手に何かが当たる。
「炎竜………」
その先には、浅い寝息をたてながら、穏やかな眠りにつく炎竜の姿があった。
無邪気な子供のように、幸せそうに眠っている。
起こさないように、優しく頭をなでる。
むにゅ、と顔を歪めたが、また元の寝顔に戻った。
その可愛らしい仕草に、くすくすと忍び笑いを漏らす。
朝の、幸せな一時。
「だけど、目が覚めたら、お前は昨夜の事など忘れてしまうのだな……」
氷竜は悲しそうな顔になった。
体を再び床へと戻し、起こさないように、腕の中へと炎竜を抱き寄せる。
「私は、弱い男だ。こんな形でしか、お前の事を愛していると言えない、情けない愚か者だ」
眠りつづける炎竜の瞳を覗き込む。
「なあ炎竜。お前はこの事を知ったら、私の事をどう思う?憎くて嫌いになるか?それとも…………」
そこで氷竜の言葉は止まった。
この先の言葉など、言うべきでないと思ったからだ……
やがて時刻は午前4時となる。
眠りつづける炎竜をその腕に抱え、氷竜は静かに部屋を後にした。








世界初の人工知能搭載ロボットとして誕生した、氷と炎の名をもつ双子のビークルロボ。
だが、炎の名を持つ弟、炎竜は誕生来のバグか、それとも天海護による突然のシステムアップのせいか、自主回路にバグを引き起こしているようだった。
それ故に、炎竜は今や毎夜の如く熱い体を持て余し、プライドも何もかなぐり捨てて兄である氷竜に抱かれる事を望む。
無論、朝になれば昨夜の行いなど記憶から削除され、炎竜自身は何も覚えていない。
氷竜は、そんな弟の醜態に我が身を提供した。
それは人で無いが為、いや、双子(もっとも近し者)であるが為、決して望んではいかぬ思い故の行動であった。
それがと知りつつも、氷竜は炎竜の望むまま、その体を抱き続ける。
せめてこの時だけ、愛しい者と一つとなる為に。



おわり




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